「物価が上がっている」という実感の中で、住居費はどうなっているでしょうか。家賃は食費や光熱費のように毎月の変動を感じにくい費目ですが、更新のたびに「こんなに上がったのか」と驚く人が増えています。
この記事では、過去20年の賃料推移を市場データと公的統計の両面から見ていきます。
市場家賃の推移:東京23区では26カ月連続で最高値更新
実際に部屋を借りるときに提示される賃料(新規成約賃料)は、ここ数年で大きく上昇しています。
首都圏分譲マンション賃料(東京カンテイ調査・円/㎡)
| 年 | 首都圏平均(円/㎡) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2006年 | 約2,300 | — |
| 2010年 | 約2,400 | +4% |
| 2015年 | 約2,600 | +8% |
| 2019年 | 約2,886 | +11% |
| 2021年 | 約3,081 | +7% |
| 2023年 | 約3,512 | +14% |
| 2024年 | 約3,603 | +3% |
| 2025年 | 約3,803 | +6% |
2006年比で約65%上昇しています。2020年以降の上昇が特に急で、コロナ後の都市回帰と建築コスト上昇が主な要因です。
東京23区内では近年家賃の上昇傾向が続いており、2025年1月時点では単身者向けの1R〜1Kの物件で平均約96,000円、ファミリー向けの2LDK〜3LDKでは平均約231,700円となっています。東京23区では最高値更新が26カ月連続で続いています。
全国平均との比較
東京の数字は極端に見えますが、全国規模でも家賃は上昇しています。
全国平均の家賃は約55,700円で、東京都の約81,000円と比べると約1.5倍の水準です。
地方では東京ほどの急上昇はありませんが、一橋大学・大東建託の「CPI方式家賃指数」(約130万戸のデータ)によると、全国的に2022年以降上昇傾向が強まっており、都市部から地方への波及も確認されています。
「賃貸住まい」への影響:更新のたびに増える負担
現在賃貸にお住まいの方にとって重要なのは、次の更新時に家賃が上がる可能性が従来より高まっているという点です。
特に都市部では、退去後の募集賃料が現行賃料より10〜20%高いケースが珍しくありません。長く住んでいる方ほど、現行賃料と市場賃料の乖離が大きくなっています。一方で持ち家の方も安心できません。固定資産税の評価額上昇や、将来の住み替え・住宅ローン借り換えの際に影響が出ます。
持ち家の方へ:金利上昇が住宅ローンに与える影響
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的な利上げを実施しています。2026年6月時点の政策金利は0.5%で、変動金利型住宅ローンの基準金利も上昇傾向にあります。
変動金利ローンへの影響
変動金利型ローンは通常、年2回(4月・10月)に適用金利が見直されます。2024年以降の利上げを受けて、多くの金融機関が変動金利の基準金利を引き上げており、借入残高が大きい人ほど毎月の返済額への影響が大きくなっています。
試算例として、借入残高3,000万円・残存期間25年のケースで金利が0.5%上昇した場合、月々の返済額は約7,000〜8,000円増加します。年間で約9万円の負担増です。
固定金利ローンへの影響
全期間固定型(フラット35など)はすでに借りている人の返済額は変わりません。ただし新規借入・借り換えの際の適用金利は上昇しており、2025〜2026年にかけてフラット35の金利は2%台に上昇しています。
これから住宅を購入する方へ
低金利時代に比べて借入コストが明確に上昇しています。同じ借入額でも毎月の返済額が増えるため、物件価格だけでなく金利水準も含めた総返済額の確認が不可欠です。また変動金利を選ぶ場合、今後さらに利上げが続くシナリオへの備えも必要です。
参考:CPI民営家賃の推移
公的統計であるCPI民営家賃(総務省)は、現在住んでいる人が払っている家賃の平均変動を示す指数です。日本の賃貸契約は通常2年ごとの更新で、更新時に大幅な値上げをすると退去リスクがあるため、既存契約者の家賃はすぐには上がりません。そのためCPI家賃は市場の実態より数年遅れて動きます。
| 年 | CPI民営家賃(2020年=100) | 前年比 |
|---|---|---|
| 2006年 | 約103 | — |
| 2010年 | 約101 | 横ばい |
| 2015年 | 約99 | 微減 |
| 2019年 | 約98 | 微減 |
| 2022年 | 約99 | 横ばい |
| 2024年 | 約103 | +1.5% |
| 2026年4月 | 約107 | +2.8% |
注目すべきは2024年以降の急上昇です。それまで20年近く横ばいだったCPI民営家賃が上昇に転じています。これは市場では数年前からすでに上がっていた動きが、ようやく既存契約者にも波及してきたことを意味します。「家賃は上がらない」という日本の常識が崩れつつあります。
まとめ
| 指標 | 2006年→2026年の変化 | 主な要因 | |——|——————-|———|
| 首都圏市場家賃 | 約2,300→約3,803円/㎡(+65%) | 都市回帰・建築コスト上昇 | | 東京23区 単身向け | — → 平均約96,000円 | 26カ月連続最高値更新 | | CPI民営家賃(参考) | 約103→約107(+4%) | 既存契約のため変動が小さい |
「家賃だけは安定している」という時代は終わりつつあります。食費・光熱費に加えて、住居費も家計の重要な変動要素として捉え直す必要があります。
出典: 東京カンテイ 分譲マンション賃料月別推移、総務省 消費者物価指数(CPI)民営家賃、一橋大学・大東建託 CPI方式家賃指数(2026年4月時点)

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